鬼才ピーター・ブロデリックによる渾身のプロジェクト。それは彼にとって偉大なヒーローである故アーサー・ラッセルの楽曲を独自の解釈で演奏し、歌い上げたカヴァー・アルバム。。。!
70~80年代にNYのアンダーグラウンド・シーンで活躍しつつも1992年に40歳の若さで逝去したチェロ奏者/シンガー・ソングライター、アーサー・ラッセル。彼からの影響を感じさせる若い音楽家も多く、ピーターもその一人でした。
このプロジェクトのはじまりはエフタークラングのバンドメイトだったラスマス・ストールバーグからの誘いでした。彼が主宰するラジオ局「The Lake Radio」が2017年夏に新たにはじめたデンマークの音楽フェスティヴァル「Badesøen Festival」への出演オファーは、「Peter Broderick sings Arthur Russell」、つまりアーサー・ラッセルの曲だけを演奏するセットというスペシャルな内容。デンマークのミュージシャンがバックアップしたこのはじめての試みは高い評価を得て、その後「アーサー・ラッセル・セット」のオファーはいくつも彼のもとに届くようになりました。そのパフォーマンスに注目したアーサーの生涯最期のパートナーだったトム・リーとの出会いをきっかけに、彼はアーサー・ラッセルの残された未発表音源のアーカイヴの調査と復元に参加。その過程において、アーサーの現存する家族とも友人になりました。
何時間もかけてアーサー・ラッセルの世に出ていない作品を聴き、自らのヒーローの魂を深く掘り下げていくことでどんどん膨れ上がっていったピーター・ブロデリックのアーサー・ラッセル愛。その結果作られたこのカヴァー・アルバムには彼の妻であるアイルランド人シンガー・ソングライター、ブリジッド・メイ・パワーをはじめ、家族や友人たちが参加していますが、アーサー・ラッセルの姪のレイチェル・ヘンリーと甥のボー・リジーも参加しています。レコーディングはピーターが生まれ、アーサーの残された家族が住むメイン州で行われました。またアートワークに使用された絵は前述のトム・リーの手によるものであり、この作品をよりスペシャルなものにしていると言えるでしょう。
収録される10曲のうちの2曲(最初と最後を飾る「Words Of Love」と「You Are My Love」)はアーサー・ラッセルの未発表曲。アーサーの残された家族の公認と祝福を得て、ピーターは眠っていた作品を自分の声と演奏ではじめてこの世界に届けてくれます。
ミニマルミュージック、ディスコからフォークカントリーまで、アーサー・ラッセルの自由な音楽性とどこか温もりを感じる独特のヴォイスは、アルバムごとに様々な世界感を展開しているピーターの実験的な音楽性の背景に感じていたリスナーは多いはず。必然といえるこのプロジェクト、アーサー・ラッセルの音楽を愛する人も、まだ彼の音楽に触れたことのない人も懐深い今作をぜひ聴いてみてください!
近年再評価高まるアーサー・ラッセル。2008年に制作された彼のドキュメンタリー映画『ワイルド・コンビネーション:アーサー・ラッセルの肖像』(原題:WILD COMBINATION: a Portrait of Arthur Russell)が今年2018年11月に渋谷アップリンクにて一夜限り上映され、DVD化もされました。こちらも併せてチェックしてみてください!
出演: フィリップ・グラス、アレン・ギンズバーグ(資料映像)、デイヴィッド・トゥープ、他, アーサー・ラッセル
監督: マット・ウルフ
こちらもチェック!
Allred & Broderick 「Find The Ways」
ヴァイオリンとアップライト・ベースと声だけでつむぐ希望の音楽。ピーター・ブロデリックが長年温めてきたエクスペリメンタル・チェンバー・フォーク。デヴィッド・オールレッドとのコラボレーション・プロジェクト、オールレッド&ブロデリックによるデビュー作。
David Allred 「The Transition」
Peter Broderickとのコラボレーションアルバム『Find The Ways』が素晴らしかった米国カルフォルニアのシンガーソングライターDavid AllredによるErased Tapesからの初ソロアルバム。彼にもまたアーサー・ラッセルからの影響を感じ取れます。Penguin Cafeの為に書いた楽曲をPeter Broderickがアレンジし、Penguin Cafeのメンバーによって演奏された楽曲も収録。
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